日本の夏は先の戦争について思いを巡らすのが常。
私も今年は敏郎さんに惚れたおかげで「戦争映画」を少なからず鑑賞した。
戦争が終わった時、ざまあみやがれ!と誰にともなく言い放った敏郎さん、戦争映画に出演し演じるというのはどんな心境だったのか。「馬鹿野郎!」だったのか「別に」だったのか「え?また五十六?!」だったのか、それとも。
敏郎さんのパブリックイメージ1位がサムライだとしたら、2位は軍人でキマリでしょう。
そんな敏郎さん出演の戦争映画ベスト8を紹介したいと思う。
出来れば全部見て欲しい 敏郎さんの戦争映画ベスト8
第8位 『太平洋の嵐』(1960年)
敏郎さんにとって戦争映画初の主演で『ハワイ・ミッドウェイ・大海空戦・太平洋の嵐』が正式タイトル。
シュールなラストに困惑。
第7位 『太平洋の鷲』(1953年)
東宝初の戦争映画。ということは敏郎さん初の戦争映画出演。特攻基地の大尉の役だが無駄にセクシー。
第6位 『独立愚連隊』(1959年)
チョイ役でも全力投球、敏郎さんのコメディセンスと器用でリアルな演技に感動。
第5位 『激動の昭和史・軍閥』(1970年)
敏郎さんの出演シーンは非常に短いが、ジャーナリズムを題材にした作品自体の見る価値は大。
特攻隊役黒沢年男のセリフが刺さる。
第4位 『太平洋の翼』(1963年)
主演。悲惨なのに青春ドラマ風なのが感傷を誘う良作。
第3位 『太平洋奇跡の作戦・キスカ』(1964年)
主演。敏郎さんの渋い大人の魅力がモノクロに映える。人間模様、円谷特撮、スリル、カタルシス。
同率第2位 『血と砂』(1964年)
主演。ジャズと斬新な設定に人間的魅力溢れる小杉曹長。この男のためなら戦えるし死ねる。
同率第2位 『太平洋の地獄』(1968年)
美しき怪作。生存本能は敵対感情より強し。いずれ争う種に変わりなし。
第1位 『日本のいちばん長い日』(1967年)
主演。コレを見ずして日本の戦争映画は語れない必見の一本。
悲惨さより力強さが印象に残る作品が多いのは敏郎さんの陽の個性ゆえか。実際の敏郎さんは上等兵どまりだったが、役者としてはエライ人を演じることが多かった。生まれつきの堂々とした態度が軍服マジックで権力者の威厳として映る。【三船敏郎=偉そう】という図式は、この辺りからも来ているのだろう。上に紹介した作品は今でも容易に鑑賞することができる。古い戦争映画なんて若い人が一番見なそうなジャンルに限ってキッチリDVD化されているのがなんとも言えない。
敏郎さんの演じる軍人は男臭さが凝縮された面構えに緊張感が漲り、今の日本人には全く見られない充実した像を呈しているので、それだけでも見る価値がある。私は特に『血と砂』の小杉曹長が好きだ。話せて情に厚く、全くもって憧れの男である。あんな顔つきを一度でもしたことがあるか?と鏡の前で自分に問うて、どれか好きな軍人役を選んで真似してみるのもいい。
憧れの対象に近づこうとして形から入るのは有りだ。敏郎さんのようになりたいと思う私がまず考えたのはヒゲを生やすことだった。しかし万人のヒゲとはレベルが違いすぎる高すぎる。敏郎さんのヒゲの格好良さは無精髭にあるからだ。
本当に敏郎さんは無精髭が似合う。敏郎さんの魅力のポイントは数多けれど、この「無精髭のサマになってる感」は他の追随を許さない分、最も特徴的な魅力になっている。しかしながらヒゲの男は日本では依然として女性からの支持が少ない。ヒゲを受け付けない女性が多い限り、日本での敏郎人気は沸騰しないのかもしれない。
オダジョー、山田孝之などイケメン俳優が揃って無精髭イメージを定着させつつある昨今、ソレへの抵抗は和らいできてはいそうだが
誰がこれほどまでのオトコぶりを見せることができるだろうか?
三船敏郎33歳、無精髭だからこそ加速するブッチ切りの男ぶりを。
長髪に無精髭がひときわ目立つ『太平洋の鷲』の友永大尉、ちょうど『七人の侍』撮影中断中の出演だったらしく、菊千代の風貌は保たざるをえなかったという事情で、セクシー過剰になっている。
日本という枠を外しても、こんなに無精髭がセクシーに見える男は世界でも少ないだろう。敏郎さんのセクシーさというのは優しさに近い感触がある。友永みたいな男に瞳を覗き込まれたりしたら、ちょっとヤバいかもしれない。Urban DictionaryでToshiro Mifuneを引くと、こんな例文もある。
I would go gay for Toshirô Mifune.
江島のハミケツふんどしに始まり、様々な作品で「ソコでソレいる?」的露出、他の役者と比べて極端に布地の量が少ない衣装等、敏郎さんは男としては多めの露出を強いる演出にさらされていると感じるが、敏郎さんのセクシーさはソコよりもドコよりも無精髭にある。男の美観を損ねがちな無精髭でさえ魅力の源になっている、敏郎さんはどう転んでも男前なのである。